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3 本稿の視点
以上において述べたように、従来、われわれが地方税について検討する際に決定的に欠けていたのは、課税管轄権という観点である。しかし、地方税の問題を純粋に法的にみると、それは、なによりもまず、地方団体の課税に関する管轄権の問題であることに気付く。繰り返しになるが、これが本稿の基本的な視点である。
地方団体に対して完全なる本源的な課税管轄権が与えられているのであれば、それは、他の地方団体の課税管轄権との間で衝突をおこすのみならず、国家の課税管轄権との間においても衝突をおこすであろう。また、地方団体に対して完全なる本源的な課税管轄権は与えられておらず(国家の課税管轄権から派生する)第二次的な課税権しか認められていないとしても、地方団体どうしの「課税権」の衝突という問題が少なくとも理念的には生ずるはずである。
このように、地方税の問題を課税管轄権の問題として見ると、地方税の問題が、実質的に、国際課税(課税管轄権の衝突に関する検討を主たる対象とする)の問題そのもの(あるいは、それと実質的に類似のもの)であることがわかる(その意味で、地方税と国際課税という問題の設定のしかた自体が自己矛盾をはらむ)。結局、国際課税(国家どおしの課税管轄権の衝突に関するそれ)について議論することが、そのまま、地方税と国際課税について議論することにつながるのである。地方分権と国際問題とは、同一のものとして考えることができるのである。国と地方の対立という問題設定よりも、地方団体と地方団体の問の対立という間題が重要となる。また、そうした前提に立つと、国際法と国内法は相対化される。
したがって、本稿においては、多少大胆な方法なのかもしれないが、国際租税法における課税管轄権に関する議論を前提として、地方税の問題について考えてみることとしたい。具体的には、地方団体の課税権の理論的範囲と、その国家法による制限を、国家の課税管轄権の範囲と、その国際法による制限とパラレルに論じたい。

 

二 地方税と国際課税
1 課税管轄権(tax jurisdiction)の種類
まず、地方団体と課税管轄権のかかわりについて議論する前提として、課税管轄権そのものについて少し検討しておこう。課税管轄権の範囲については、主として、国際法や国際私法において議論されている。この問題は、法理論的にきわめて奥深いものであり、それについて、ここで片手間に検討するわけにはわけにはとてもいかない。したがって、この点に関する検討をここで特に行うことはしない。
ただ一点だけ指摘しておきたいのは、課税管轄権が、国際法上、国家主権の属性として理解されている点である。たとえば、山本草二教授は、管轄権を、「国家がその国内法を一定範囲の人、財産または事実に対して適用し行使する国際法上の権能をいい、国家主権の具体的な発現形態である」と定義されておられる(国際法学会編「国際関係法辞典」155頁)。もっとも、課税管轄権といっても、単一のものではなく、国家の三権に対応して、立法管轄権、執行管轄権、司法管轄権の三つに分けられる。そして、一般的に、立法管轄権はきわめて広いものととらえられているのに対して、執行管轄権は属地的に制限されたものととらえられている(なお、司法管轄権も同様である)。
本稿において以下に議論するのは、主として立法管轄権についてである。
2 地方団体に「課税管轄権」は認められているか?
それでは、地方団体に対して、国家に関すると同様の意味において、何らかの「課税管轄権」が認められているであろうか。この議論は、基本的には、地方団体は独立国である

 

 

 

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